LOGINメイドさんがレイニーの分の紅茶を用意してくれ、レイニーは自ら気まずいお茶会に足を踏み入れてしまった。
「えっと……なんのお話をしてたの?」
レイニーは、沈黙を破るために話を振ってみた。
「これといって、お話は……」
ルナが苦笑いをして答えてくれた。その声には、気まずさが滲んでいる。
「そうなんだ。ルナ、この後さ、お昼一緒にたべよ?」
(可愛い妹のルナと一緒にお昼を食べれたら最高だなぁ♪) レイニーの顔には、期待の笑顔が浮かぶ。
「はい。よろこんで、ご一緒いたします♪ お兄様」
ルナは、嬉しそうな笑顔で頷いてくれた。
レイニーとルナは、魔法の話で盛り上がった。
(フィオナの第一印象は最悪だったと思う。お客様のフィオナの相手をせずに、ルナとばかり話をしていたのだから。でも、仕方ないでしょ……ムスッとしているのが悪い!) レイニーは、心の中で開き直った。
「フィオナは、魔法の属性は?」
ルナと二人で話しているのも悪いと思い、レイニーはフィオナに話を振ってみた。
「……べつに。魔法の練習はしていますけれど……詳しくは知りませんわ」
フィオナは、興味なさそうな感じで、レイニーからそっぽを向いて答えた。
(魔法にも、俺にも興味がなさそうだ。まあ、俺も興味はないけどね。今は、ルナちゃんが妹であり友人でもあるし。)レイニーの顔には、諦めの色が浮かんだ。
「ルナは、午後から何するの?」
レイニーは、ルナに尋ねた。俺は魔法の練習をしたいだけで予定はない。ルナが暇だったら誘って、一緒に魔法の練習をしたいなぁ。
「えっと……ですね、今日はフィオナさんと一緒にいますよ。お兄様は……?」
ルナもレイニーの予定を聞いてきた。ルナと一緒にいたいけど、ムスッとした王女様とは一緒にいたくない。それなら気軽に魔法の練習をしたいかなぁ。レイニーは、少しばかり残念に思った。
「俺は……午後からは、魔法の練習をしようかなって思ってるよ」
フィオナは、相変わらずそっぽを向いて話に参加する気がないらしい。一応、お客様だし、誘わないとかなぁ。レイニーは、形式的にフィオナに声をかけることにした。
「ん……あのぉーお昼、良かったら一緒に食べる?」
レイニーは、恐る恐るフィオナに聞いてみた。
「わたしは、両親と食べるので……お構いなく」
目も合わせずに即答された。(関わりたくないんだろうなぁ。それにしても……ルナは大変だなぁ、ムスッとした子の相手をさせられてるんだから。)レイニーは、ルナに同情した。
とか思っていたら……メイドさんがやってきた。「ルナ様、国王様がお呼びでございます」と呼ばれてしまい、ルナは行ってしまった。
(あれ? これって……俺が相手をしないとじゃないの? えぇ……?) レイニーは、途方に暮れた。
「はぁ……。どうしたの? ずっと不機嫌そうだけど……」
レイニーは、思い切ってフィオナに尋ねてみた。
「べつに……不機嫌ではないですわ。普通ですけれど」
今度は、振り向き、レイニーの顔を見て答えてくれた……が、ムスッとしてるのは変わらず。その表情からは、レイニーへの警戒心が読み取れる。
「そうなの? 隣に座っても良い?」
レイニーは、諦めずに歩み寄った。
「ご自由に、どうぞ」
フィオナの声には、無関心さが滲んでいた。べつに、仲良くなりたいわけじゃないけど……少しは気まずくなくなるかと思ったが、失敗かも。レイニーは、そう思った。
(隣に座ったのは良いけど、何を話して良いのやら……我が妹よ、早く帰ってきてくれ。)レイニーは、心の中でルナに助けを求めた。
「えっと……”フィー”は、なにか趣味とかあるの?」
レイニーは、とりあえず——めげずに話題を振ってみた。
「……フィー? フィーとは、わたしのことかしら……?」
フィオナは、ムスッとした顔でレイニーを睨んだ。
(会ってすぐに愛称で呼ぶのは、気が早かったかぁ……。)レイニーは、自分の軽率な行動に反省した。
「あ、ごめんね。嫌だったら……やめるよ……」
レイニーは、すぐに謝罪し、他の話題を考え始めた。
(というかさぁ……。一応、話題も振ったんだけどなぁ……。)レイニーの顔には、困惑の色が浮かぶ。
——すると。
「……レイくんは、趣味があるのかしら?」
フィオナは、そっぽを向いたまま、たぶん……頬を赤くさせて聞いてきた。フィオの耳が赤くなっているのが見えた。しかも俺に愛称をつけてくれたらしい。それに俺に興味を持ってくれた? まぁ……気まずいからかな。レイニーは、フィオナの意外な反応に少し驚いた。
「俺は、魔法と冒険かな! えへへ……♪」
レイニーは、満面の笑顔で答えた。
「魔法は、分かりますけれど……冒険ですか? 冒険をしているのですか? レイくん……王子ですよね?」
フィオナは、小首をかしげ、ムスッとした表情から不思議そうな表情に変わっていた。その声には、驚きと、どこか興味が混じっている。
その岩の割れ方は、まるで誰かが強大な力で割ったようだった。こんなパワーを持つ人間を見たことも聞いたこともない。もし、そんな人間がいたら軍が見逃さずにスカウトしているだろうし。それか、冒険者の中にいるのかもしれない。レイニーは、その圧倒的な力に想像を巡らせた。「ここから入れそうだよ?」 エリゼがニコッと言ってきた。さすが、冒険者志望だね。しかも責任回避をして俺に行かせようとしているしぃー。俺なら何でも許されると思っているのか? 今のところは許されているけどさ〜♪ レイニーは、エリゼの行動に、面白さと、わずかな呆れを感じた。 まあ、こんな面白そうな所を見つけたら、誘われなくても行くでしょ。「一緒に行く?」 レイニーは、エリゼならついてくると分かってて笑顔で聞いた。「……うぅ……こんな所で、わたしを一人にするの?」 エリゼがレイニーの服をそっと掴み、不安そうに見つめてきた。その瞳には、心細さが滲んでいる。「エリゼなら大丈夫じゃない?」 レイニーは、エリゼの反応が可愛くて……ついついイジワルなことを言ってしまう。「いやぁ。大丈夫じゃなーい。一緒に行くぅー!」 可愛い頬を膨らませたエリゼが言ってきた。「だよねぇ〜」「うん♪」 二人で顔を見合わせて頷き、ニコッと笑った。このパーティでは、エリゼが止める役だったが、俺と一緒にいることで影響を受けてしまっていて、今では止める人がいないので危ないかもしれないな。レイニーは、今後のエリゼとの冒険に、若干の不安と、それでも期待を抱いた。♢洞窟の探索 洞窟に足を踏み入れると、まず湿った空気が肌にまとわりついてくる。冷たく湿った石の壁には、所々に苔が生え、ゆっくりと滴り落ちる水滴の音が洞窟内に響き渡る。洞窟内は薄暗く、アイテムボックスから取り出した松明の明かりがぼんやりと前方を照らす。壁に空いた亀裂や足元の不規則な石の配列が、ここが自然の力でできたものであることを物語っていた。その光景は、
軽食を摂り、少し元気が出たのでアイテムボックスから剣を取り出しエリゼにも渡した。実力は少年兵よりは高いから、少しは頼りになると思う。……お遊び程度の魔物しかでてこないと思うけど。この辺りの魔物の反応が、低級の魔物の反応しか無いし。これなら二人で楽しみながら山頂に向かえるかなっ。レイニーは、山の気配を探索し、状況を判断した。「さー、出発しよー♪」「はぁいっ!」 エリゼは、元気いっぱいに返事をした。 小さい魔物が現れると、二人で顔を見合わせてニヤッと笑った。「どうする? エリゼも戦いたいんじゃない?」「わたしに倒せるかなぁ〜?」 エリゼはそう言うけど、顔が笑ってるじゃん。しかも剣を構えてるし……。レイニーは、エリゼの興奮を感じ取った。「どーぞー♪」「……う、うん。えいっ!」 エリゼは、シュパッ!と剣を振り下ろし、一撃で魔物を討伐できた。その剣筋は、見事なほどに鋭い。「わぁーい! 倒せた! ねえ、見た?見た?」 エリゼは嬉しそうに振り返り、満面の笑顔で聞いてきた。昨日の森とは雰囲気が違い、不気味な雰囲気もないし。その瞳は、達成感に輝いている。「うん。余裕そうだね〜!」 というか、さすがセリオスの娘で剣の扱いが慣れていて剣がぶれていないし、剣のスピードが早い。レイニーは、エリゼの才能に舌を巻いた。「まぐれだよー」 エリゼは謙遜してるけど、日々の訓練の成果だと思う。これだと、俺の出番が無くても良いのかもなぁ〜接待の魔物の討伐だなぁ。日頃の感謝の気持を込めて、エリゼに付き合おう♪ レイニーは、エリゼの成長を喜び、温かい気持ちになった。「次は、お兄ちゃんね!」「俺は、帰りで良いよ〜。二人で疲れちゃったら、強敵が出た時に困るでしょ〜」 エリゼが楽しそうだったので、今は遠慮しておこうかな。レイニーは、エリゼに花を持たせることにした。「あぁ〜そっかぁ。わかった! 行きは、わたしが頑
「はいっ! もちろんですっ♪ おとーさまっ」 レイニーは、そう言いながら国王に駆け寄り、抱きついた。それで、甘えておこうっと♪ 国王の服の感触が、幼い体に心地よい。「うむ。だが、キケンなことはするでないぞ!」 抱きつかれて、苦しそうな声を上げる国王の声が鳴り響いた。その声には、レイニーへの愛情と、それでも厳しさを教えようとする親心が感じられる。「はぁーい!」 レイニーは元気に返事をして、しばらく甘え続けて部屋に戻った。♢山への道のり ……翌日。 早朝から用意をしておいた馬車に乗り込み、エリゼと馬車で山へ向かった。 ちゃんとした送迎用の馬車で、王国の紋入りではなく普通の一般的な送迎用の馬車だ。一般人は……馬車には乗らないけどね。「わぁ! ちゃんとした馬車なんて初めて!」 エリゼが窓の外を眺めて、嬉しそうに声を上げた。前回乗ったのは兵士を護送するタイプの馬車だったしね。その瞳は、新しい体験に輝いている。「あはは……たぶん……10分もすれば具合が悪くなると思うよ……。この直に来る振動に揺れがキツイんだよね」 レイニーは、経験からくる予感を語った。「えぇ〜楽しいじゃん♪」 エリゼが、左右の窓に行ったり来たりして楽しそうに過ごしていた。その無邪気な姿に、レイニーは頬を緩めた。 …………。 ………………「あ、あぅ……」とエリゼが声を上げた。馬車が道に転がっている石に乗り上げ、たまに大きな振動が直におしりと腰にくる。その衝撃は、馬車全体を揺らし、乗員の体を突き上げた。 ………………。
「そうかな? 魔物がよく現れるらしいよ」 レイニーは、あくまで冒険者ごっこにこだわる。冒険者ごっこなら……魔物と戦えればいいと思うけど? もう目の前だしぃ……。山に行くのは明日でいいじゃん。「うん。そんな感じがする……不気味だし、入ったらダメな気がするよ……」 エリゼが怯えた表情で言ってきた。その声には、強い拒絶感が滲んでいる。 せっかく苦労して辿り着いたのに〜勿体ないじゃん。レイニーは、少しばかり残念に思った。「少し進んでみようよ。それで、ヤバそうだったら引き返そー♪」 レイニーは、エリゼを説得しようと提案した。「えぇ……うん。わかったっ」 レイニーの押しに押されて、エリゼは仕方なさそうに返事をした。その声には、諦めと、それでも兄への信頼が混じっている。♢森の奥へ 普通の森とは違い、不気味で薄っすらと靄がかかっている。魔物の住む不気味な森は、昼間でも薄暗く、どこか現実離れした雰囲気を漂わせている。森の中に一歩足を踏み入れると、魔物のテリトリーに入った感覚を感じた。すでに、あちらこちらに小物の魔物が彷徨いているのが見える。 湿った土の匂いと腐葉土が混ざり合った独特の香りが鼻をつく。木々は異様な形をしており、曲がりくねった幹やねじれた枝があたりを覆い、まるで生きているかのように感じられる。その光景は、レイニーの好奇心を刺激した。 風が吹くたびに葉がざわめき、不気味な囁き声のように聞こえる。苔むした石や木の根元には、奇怪なキノコや見たこともない植物が生えており、その中には毒々しい色をしたものもある。地面には生き物の足跡が点々と残っており、その形がどれも一様ではなく、何か恐ろしいものが潜んでいることを示唆している。その雰囲気は、エリゼの恐怖を煽った。 魔物の存在は確実だったので、結界を自分とエリゼに張り、歩みを進める。念のために害意を感じると、自動で反撃するように魔法を複数発動準備をさせておいた。頭上には複数の小
「あー助かるよ。借りてくね〜♪ あ、でも……借りた剣は、ちょっと……ここまで返しにこれないから……そうだ! セリオスに渡しておくから取りに来てくれる?」 レイニーは借りた剣を受け取り、城に帰ったらエリゼを送り届けた時に、剣も渡しておけば返してくれるでしょ、と内心で思った。「……へ? え? いやいや……セリオス様って……騎士団長のですよね?」 副所長が、顔色を悪くしていた。今更って感じだと思うよ、その娘のエリゼの扱いも雑だったし〜。レイニーは、副所長の反応に内心で呆れた。「そうそう」 レイニーは、あっけらかんと言った。「レイニー様、普通の一般兵が、セリオス様とお話をするのは厳しいかと……」 副所長が俯き呟いた。そうかな……今は、一般兵の練習を見てるけど? まあ……周りは凍りついた様子になってたが。レイニーは、副所長の言葉に首を傾げた。「じゃあ、王城の警備部隊に預けておくよ〜」「はい、それなら問題ないです」 副所長がホッとした顔で返事をした。その表情からは、安堵の色が読み取れる。「それと……女性の事務作業員も解雇ね。仕事もせずに楽しいお話で給金を不正に得ていたんだから……あ、それもお父さまに任せるから良いか。俺よりも、厳しい罰を与えると思うから……じゃあね〜」 それを聞いた女性職員が、青褪めた顔をして座り込んだ。その顔は、絶望に染まっていた。 ま、自業自得でしょ……所長の権力で従わされていたとしても、給金は税金で支払われてるんだしさぁ。レイニーは、冷徹にそう判断した。「エリゼを呼んできてくれる? 出掛けるからぁ〜♪」 兵士たちが慌ただしく動き出し、相手はセリオスの娘だと知
「あぁ……これ」 レイニーは、そう言い、チラッと国王の紋章の入ったナイフを見せると、警備隊長が慌てて跪いた。その動作は、まるで機械仕掛けのようだった。「あ、それは良いから……エリゼの護衛を部下の人に頼めるかな?」 出入りの多い、詰め所の前だったのでエリゼを放って置くと連れ去られたら困る。レイニーは、エリゼの安全を最優先に考えた。「はっ! かしこまりました!」 警備隊長は、震える声で答えた。 エリゼが警備兵に囲まれ、応接室へ連れて行かれた。勝手に応接室を使われて、所長はムスッした表情で近寄ってくると文句を言い始めた。その顔は、怒りで歪んでいる。「城門の警備隊長だから多めに見ていたが、許可なく勝手に応接室を使うとは……無礼だぞ、俺たちは王都の警備部隊所属で別の管轄だぞ! あとで厳重に王都警備隊長に報告し、文句を言ってもらうからな!」「あーそれは、出来ないと思いますけど〜?」 レイニーが、後ろで腕を組みそっぽを向いて、二人の会話に口を挟み元所長に言った。その声には、どこか冷たさが混じっている。「……なんだクソガキ、まだいたのか!? 子供の口出しする話じゃないぞ。おい! 副所長、このガキを外に放おり出せ! 邪魔だ!」 所長は激怒した表情で、顔に血管が浮き出ているって……こんな感じなんだろうなぁ……という表情をしている。その怒声は、詰め所全体に響き渡った。 レイニーと隊長の話を聞いていた副所長は、堂々と無視をした。その顔には、迷いと、それでもレイニーへの警戒が読み取れる。「おい! 聞こえんのか!? 俺は、ガキをつまみ出せと命令をしているんだぞ! 上官からの命令無視は、厳罰だぞ! 貴様! 命令だと言っているだろ!」 所長の声は、怒りで震えている。「だよね。命令無視は厳罰だよね……? 警備改革を無視して改善が出来てないんじゃないの? 王都警備隊長







